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コラム
お客様が考える「良い管理」と管理会社が考える「良い管理」

「良い管理」という定義をどのような言葉で表現できるのか、素朴なようで大変奥が深い問題について取り組んでみました。

区分所有者の皆さまがどのような基準で管理会社を選ぶのかといえば、画一的な答えのない大変難しい問題です。なぜかといえば、管理組合は区分所有者の集合体なので各々の皆様の価値観がすべて同じとならないからです。
管理会社を選ぶ場合、大まかなイメージとしては、大手だったらどこでも良い、安ければどこでも良い、というような両極端ではないでしょうか?そこにコストのバランスが加味されるというケースが一般的ではないかと思います。

良い管理ということを考えるとき、誰から見てよい管理なのかという問題があります。
お客様の側から考えると、個々のお客様の価値観はさまざまで、一行二行程度の文言に集約するのは大変難しい問題なので、ここではお客様が感じる一般的なイメージを集約して、良い管理というに定義に置き換えることでお許し下さい。

清掃が行き届いている、管理人さんが親切、管理会社の担当者がよくやってくれる、金銭の出納・保管が安心、緊急対応がよい、修繕工事が丁寧、会社の対応が早い、ブランドイメージがある、コストが安い、いろいろな提案がある

これらを踏まえて、管理の専門化として、もう少し掘り下げた分野に重点をおいて、管理をする側から『良い管理』の定義を以下のようにまとめてみました。

1.管理組合の活動の履歴がきちんと整理されていること

例えば、理事会の活動記録、各種点検記録、工事の記録などが、きちんと整理されているということです。 当たり前の話ですが、これがなかなか、できていないケースが多いようです。特に小規模なマンションでは、書類の保管場所も無く、管理会社へおまかせという流れで、どこに何があるか、分からないという状況です。
特に担当者が会社を辞めてしまったり、転勤したりすると、もうお手上げです。これでは、マンションの履歴を継続して保管することは不可能です。
保管しなければならない書類の管理、保管場所、運用方法などについて、確認しておくことが必要です。履歴の保管では特に以下の項目が重要になります。

①理事会議事録、総会議事録などの保管
いつ、どのような会議を開いて、どのように決まったのか、議事録の保管が不十分だと、会議の重要性が失われてしまいます。特に管理規約にかかわる変更は重要です。

②工事関係の履歴
いつ、どこを、どのように工事したのか、工事履歴は重要な資料です。大規模修繕以外の工事資料もきちんと整理保管しておく必要があります。

③各種点検記録
報告書をつくることが点検の目的になっていませんか? 問題点の指摘があれば、改善していかなければなりません。点検結果を活かさなければ、そのデーターの価値は半減してしまいます。 必ず点検報告書の内容を確認し、年度ごとにまとめておく必要があります。

以上のほかにも重要書類はたくさんありますので、保管文書一覧でまとめておくと便利です。

2.会計報告が明確で、附属の説明資料がきちんと保管されていること

「金銭の収納・出納・保管のチェック機能が働いているかどうか」、「会計報告は充分理解できる内容か」という問題です。

よく新聞などで取り上げられるケースでは、管理担当者や、現場の管理人さん、というようなスタッフの使い込みが、数年後に判明するケースや、理事長の横領などが判明した事件でわかるように、会計報告のチェック機能がきちんと働く仕組みがあるかという問題です。不正があった場合でも、遅くても1ヶ月以内には、問題が判明するような仕組みが必要です。

3.長期修繕計画がきちんと機能していること

長期修繕計画は、毎年見直しをおこない、年度ごとに資料を差し替えていくべきだと思います。年度ごとに積み立てられた資金を計画表に落としこみ、工事の先送りができるのか、前倒しでやるのかなど、必ず年に1回は検討しておくべきだと思います。

4.管理業務の仕様がきちんと明記され、適正なコストであること

なんだかよく分からないけど、一式いくらでは、話になりません。少なくとも何を委託して、委託したコストがどうなのか検討できる明細はあってしかるべきです。理事会、総会で予算について真剣な議論が必要です。

5.管理会社の提案能力のレベルが高いこと

文句を言わないと資料が出てこない、何の新しい提案もないというご意見をよく耳にします。日常業務以外の報告をする義務はないという認識の管理担当者もいるかもしれません。
こういった担当者は、おそらく管理業務の報告をすることが目的となってしまい、お客様のお役に立つという視点が欠けているかもしれません。
管理会社の役割には、建物の維持管理と併せて、居住者の皆さまの、良好なコミュニティーづくりにも協力していく必要があると考えます。

居住者の皆さまの良好な関係が、理事会、総会において、前向きな議論の場として、機能することになり、抽象的ないい方で、申しわけありませんが、皆様が過ごしやすいと思えるマンションライフにつながっていくような気がします。

他にもあげておきたい点は多々ありますが、以上の内容を、以下のような文言に整理して『よい管理』の定義としてみました。

①各種履歴が継続して、整理されていること
②管理組合会計が公正・透明で、分かりやすいこと
③長期修繕計画がきちんと機能していること
④総会・理事会の運営が機能していること
⑤過ごしやすい環境作りへの貢献があること

一度、マンションにお住まいの皆様で、『良い管理』という定義について、検討してみて下さい。定義を共有することで、管理の重点課題が見えてくるかもしれません。

皆様の考える『よい管理の定義』について、ご意見をいただければ幸いです。


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